琉球大学は、多様性に富む特色ある自然環境のもとに多彩な歴史を歩んできた沖縄の地に、「高等教育の場を」という人々の熱意に支えられて創設された総合大学である。その創設以来一貫して、この地域の学術文化の中心として、地域の発展に寄与する学術研究を推進し、地域社会を牽引する多くの人材を育成・輩出することを通じて、地域の発展に貢献してきた。
- 効果的なデジタル人材育成手法の確立に向けて、動画教材を活用した学習コンテンツの有効性を検証したい
- 小学生向けプログラミング教育の実証環境を構築
- 動画教材とテキスト教材を組み合わせた学習モデルを確立
- 教育現場でのアンケートを通じた効果検証を実施
誰もが学びやすい動画教材を実現するために
企業におけるDX推進が加速する中、その担い手となるデジタル人材の育成は多くの組織にとって重要なテーマとなっている。一方で、学習者の知識や経験には大きな差があり、誰もが理解しやすく、自分のペースで学べる教育コンテンツの実現は容易ではない。
そこで琉球大学との共同研究では、企業のDX推進およびデジタル人材育成を目的とした効果的な動画教材の開発・提供に取り組んでいる。
動画教材は、停止や巻き戻し、繰り返し視聴が可能であり、学習者それぞれの理解度に応じて学習を進められる特長を持つ。しかし、どのような構成や説明方法が学習効果を高めるのかについては、実際の利用環境で検証する必要があった。
その検証の第一歩として本共同研究では、年齢や学習経験を問わず理解しやすい動画教材の設計手法を検証するため、まずは小学生向けプログラミング教育の場で実証を実施。児童一人ひとりが自分のペースで学習できる環境を通じて、動画教材の有効性や改善点の検証を行うこととした。
動画教材とテキスト教材を組み合わせ、小学校で実証を実施
共同研究ではまず、小学生向けのプログラミングコンテンツおよび動画教材を開発。それを用いて、新潟県村上市内の小学校で実際にプログラミング体験講座を実施した。
講座では、児童が動画教材やテキスト教材を活用しながら、自らゲーム制作に取り組む実践型の学習プログラムを展開。教員や講師の説明を一方的に聞くのではなく、自分で考え、試しながら進められる学習環境の構築を目指した。
また、講座終了後にはアンケートを行い、教材の分かりやすさや学習体験について意見を収集。実際の教育現場での活用を通じて、教材開発だけでは得られない気づきや改善点を得ることができた。
実証を通じて教材改善の方向性を獲得、さらなるブラッシュアップへ
今回の実証実験後に実施した事後アンケートの定量データを分析したところ、本教材のアプローチに関する客観的な成果と、今後の改善に向けた課題が見えた。
- データから見る高い満足度とエンゲージメント
・体験の楽しさに関する設問では、回答した児童の100%が最高評価の「5」を選択。
・「どのくらい集中できた?」という問いに対しては、68.75%が「ずっと」、31.25%が「だいたい」と回答し、高い集中力を維持して取り組めていたことがデータから示された。
・教材の分かりやすさについても93.75%が最高評価をつけており、提供した教材構成の基礎的な理解しやすさは十分に担保されていた。 - 資材の選択傾向と進度の多様性(自律的学習の推察)
・「最も活用した教材」については、「動画(43.75%)」と「テキスト(43.75%)」で回答が二分された。児童が自身のやりやすい学習スタイルに合わせて主体的・自発的に教材を選択していた傾向が窺える。
・一方で、作品の完成度には「完成した/ほぼできた(計50.0%)」と「半分くらい/すこしだけ/できなかった(計50.0%)」という二極化が見られた。一斉授業とは異なり各自のペースで進められる設計にしたことで、児童個々の熟練度や作業スピードの差が実態として現れたと考えられる。
データ分析を通じて見えてきた今後の具体的な改善点は以下の通り。
- 特定工程における難易度スパイクの緩和
・内容の難易度について「むずかしい(すこし/すごく)」と回答した児童が68.75%にのぼり、作業時間についても62.5%が「おそく感じた」と回答。
・教材自体の評価は「わかりやすい」とされていることから、説明の質の問題ではなく、Scratchの特定工程(座標概念や条件分岐など)において心理的・時間的な負荷が急増するポイントが存在していると読み取れる。今後は動画・テキスト双方のステップをより小刻みに分解し、一回あたりのハードルを小さくする改訂が有効と考えられる。 - 自力解決を促すトラブルシューティング機能の拡充
・進度差の拡大や作業時間の長期化を防ぐため、児童がバグやつまずきに直面した際、自力で原因に気づける「よくあるエラー集」などの補助コンテンツの設置や、現場スタッフが遅れを素早く察知してフォローできる体制設計が求められる。
今回の実証で得られた知見は、教材の改善にとどまらず、年齢や経験の異なる学習者に対して、どのように学びを届けるべきかを考えるうえでも貴重な示唆となった。INSIGHT LABは今後も琉球大学との共同研究を通じて検証と改善を重ねながら、次世代デジタル人材育成と地域DXの推進に貢献していく。
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