【アルビレックス新潟】プロスポーツチームのファンマーケティングの進化を支える、データ活用のパートナーへ
新潟県全域をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するプロサッカークラブ。「地域に根ざしたスポーツクラブ」の先駆けとして、新潟県内の全市町村をホームタウンに定める。Jリーグでの活動のみならず、サッカースクールの運営や地域イベントへの参画など、スポーツの枠を超えた地域課題の解決や活性化にも積極的に取り組んでいる。
- 来場者の動向は把握できていたが、要因検証が不十分だった
- 電子チケット化でデータは蓄積されたが、仮説→検証→施策のサイクルが回しきれていなかった
- 新規ファン獲得とライト層の離脱防止が急務だった
- データ活用やマーケティング施策について、客観的な視点で相談できるパートナーがいなかった
- セグメントマップを活用した離脱防止施策を立案・実行し、改善サイクルを確立
- アンケート設計の改善により回答率が向上、ライト層の来場意思決定タイミングを把握
- 「仮説→検証」の考え方に自信を持ち、自走力が強化された
- J2降格後も年間チケット継続率約76%を維持。新規購入者数も想定を上回る
データは見える化できたが、「活かし方」がわからなかった
アルビレックス新潟は、創業当時から「勝っても負けても応援されるチームを作る」という理念を掲げてきたクラブである。もちろん、プロスポーツなので選手や監督が全力で勝利を目指す。その上で、地域に根ざしたスポーツチームのあり方を追求し、ファンマーケティングを積み重ねてきた結果、勝敗やカテゴリにかかわらず平均2万人以上がホームゲームに来場する、国内屈指の集客力を誇るチームとなった。

しかし同時に、マーケティング上の課題も存在していた。お客様の動向はある程度つかめていたものの、把握できていたのは「結果として動いた」という事実。どういう要因で、どの施策によってお客様が動いているのかという検証が不十分だったのである。
2020年のコロナ禍をきっかけに電子チケット化が急速に進み、来場回数やユニークユーザー数、来場頻度といったデータが見えるようになった。だが、データが見えるようになったことと、そこから仮説を立てて検証し施策に落とし込むこととは別の話だ。どれだけコアなファンであっても、離脱していくケースは避けられない。だからこそ、新しいファンの獲得と既存ファンの維持は極めて重要であったのだ。
そうしたタイミングで、2025年のシーズン前にアルビレックス新潟が出会ったのが、INSIGHT LAB代表取締役社長CEOの遠山功である。これまで手がけてきた数多くの事例を紹介していく中、エンターテインメント領域における取り組み実績に興味を抱き、パートナーシップを締結。事業本部長の風間一理氏は「正直に言えば藁にもすがるような気持ちだった」と振り返る。
(遠山)私はもともと新潟に縁があり、2020年頃からINSIGHT LAB 新潟研究開発センターを開設しています。サッカーが好きだったので、スポンサーとして応援すると同時に、別の形でも貢献したいと思ったのが、データやマーケティングの領域におけるパートナーシップという形でした。
来場者のセグメントマップで状況を可視化し、施策を展開
INSIGHT LABとの取り組みは、月1回・約1時間のミーティングが中心だった。新潟にて対面で行われ、チームの状況や次のプロモーション施策について対話を重ねている。その際、アルビレックス新潟側が大切にしていたのは、あくまで「仮説は自分たちが出す」というスタンスだった。
「こういう仮説を立てたのですが、どうでしょうか」「こういう施策を試してみたのですが、どう思われますか」
こうした問いかけに対して、遠山はこれまでの経験をもとにプラスアルファのアドバイスを返す。風間氏はこの関係性を「壁打ち」に例えた。「遠山社長は非常に弾力性のある壁だった。投げかけに対して、ただ返すだけでなくそれ以上のものを返してくださる」。すべてを委ねるのではなく、仮説を立てる責任は自分たちにある。その上で的確なフィードバックが得られるパートナーシップは、クラブにとって理想的な形だったという。
具体的な取り組みのひとつが、お客様のセグメントマップを活用した離脱防止施策である。今シーズンの来場回数と前年の来場頻度を図式で表し、お客様の分布傾向を可視化した。
このマップをもとに、たとえば「去年は来場していたのに今年はまだゼロ回」の層をどうスタジアムに戻すか、「来場頻度が下がりつつある」層にどうアプローチするか。こうした仮説をクラブ側で立てた上で、INSIGHT LABに相談しながらブラッシュアップしていった。
特定の1試合ではなく複数試合にわたって施策を展開した方がよいというアドバイスや、離脱リスクの度合いに応じたインセンティブの選定方法は、クラブにとって具体的な示唆となった。「まずはやってみて、数字を蓄積した方がいい」という一言も、風間氏が印象に残ったものとして挙げている。
(遠山)アルビレックス新潟さんは、しっかりとしたファンマーケティングがすでにできていて、データもあり、目指す方向性もある。そして、情熱もスピードもある。私たちがやっているのはむしろ交通整理に近い。料理で言えば、豚肉もジャガイモも玉ねぎも揃っている。素材はあるのに何を作ればいいかわからないという状態を整理して、目的にあったレシピを一緒に考えていくイメージです。
今後の展望。マーケティング意識を社内全体へ
昨シーズン終了後、アルビレックス新潟はJ2リーグでの戦いが決まった(2026年3月、取材時現在)。年間チケットの販売にも影響が出ることは覚悟されていたが、辞める人は予想より少なく、新規購入者も想定以上の結果だった。後者については、INSIGHT LABと1年かけて取り組んできた「ライト層の離脱を防ぎ、コアに引き上げていく」という施策の積み重ねが結びついた部分もあるのではないかと、風間氏は話す。
今後は、分析の手法や切り口をさらに広げていく方針だ。セグメントマップのライト層をコアに引き上げるためには、まず顧客の気持ちを動かす必要がある。どういうアプローチをすれば心に届くのか。これまでのHow(どうやるか)から一歩踏み込んだWhat(何をすべきか)にフォーカスしていくことが、次の課題だという。
INSIGHT LABとアルビレックスのパートナー契約は、2年目も引き続き締結された。各部門が縦割りで動く中で、ファンづくり・顧客づくりに向けてどう一丸となるか。マーケティングの考え方を社内全体に浸透させていくための施策も、今後の相談テーマとなる見込みだ。
(遠山)アルビレックス新潟のチームスタッフの皆さんは献身的で、知識に貪欲で、行動力もある。私たちはスポンサーとしてだけでなく、データ・マーケティングのパートナーとして関わる中で見えてきた大きなテーマは、街づくりや人づくり、新潟のスポーツ文化の未来です。アルビレックスが新潟にあるからこそできることを、施策レベルのミクロな視点と、地域全体のマクロな視点の両面からご支援していきたいと思っています。

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