【 JHAのゲームアナリストにインタビュー】ゲームアナリストのリアルな仕事内容とは?
2023年6月から、ホッケー女子日本代表「さくらジャパン」のゲームアナリストとしてチームに帯同している「Koh」(ニックネーム)。1ヶ月の欧州合宿から戻った彼に、ゲームアナリストのリアルな仕事内容についてインタビューしてきましたので、レポートを公開いたします!
- まずは1ヶ月の欧州合宿、お疲れ様でした!どうでしたか?
ありがとうございます!大変でした!笑
どう大変だったかは後で話すとして、まずアナリストとしてやっていたことは主に2つです。
- 練習や試合のビデオ撮影(ビデオも動画データなので、アナリストの役目)
- プレイをデータ化する「スカウティング」
試合や練習がある日は、自チームのビデオ撮影とプレイのスカウティングを同時並行して取得。それらがない日は、オリンピック出場に向けて競合チームのビデオをスカウティングし、プレイ傾向を分析していました。
チームにアナリストは僕だけなので、何から何まで全てひとりでやります。現場によって電源の位置や日の当たり方なんかも違うし、あれがないこれがないも出てくる。そんなイレギュラーにひとりで対処してくのは、学びもありつつ、大変でもありましたね。
気持ち的にも、チームに馴染むまでは落ち着かない日々でした。
実は僕、アイスホッケーは経験者ですが、フィールドホッケーは未経験。ルールを理解しきれていないところもあって。だからチーム内では最初、「ホッケーのルールも知らないアナリストがはいってくるらしい(ざわざわ)」みたいな感じだったんですよ。笑
それに加えて、男性は僕と監督だけであとは選手・スタッフ全員女性という環境。
これはまず、チームの一員として受け入れてもらわないといけないと思い、メンバーと過ごす時間を意識的に増やしたり、人見知りなりに頑張ってコミュニケーションを取るようにしました。アナリストに直接関係してくる活動ではない、朝のウォーキングなんかにも積極的に参加しました。それもあって、勤務時間で言うと1日8時間じゃきかないくらい忙しかったし大変でもありましたが、結果的には、1ヶ月という短い期間でも、「いっしー」って呼ばれるくらいには溶け込めたし「この欧州ツアー、いっしーはずっと疲れたね」っていじられて笑ってもらえるくらいには、チームに馴染むことが出来ました。笑
- 自分からアクションを取っていて本当に素晴らしいです!ちなみにスカウティングって、具体的にどうやっているんですか?
スカウティング、つまりスポーツデータの収集には、「スポーツコード」というツールを使っています。個人アナリストには手が出せないような値段のツールなので、僕も今回初めて触りました。
そのツールを使って、片手でビデオを撮影、空いているもう片方の手でキーボードをカチャカチャしています。そのキーボードっていうのがこちら。
キーボードのボタンにプレイの情報(パス、ミス、ゴールなど)が割り当てられていて、試合や練習の中で、それらに該当するプレイが発生する都度、キーボードを押します。そうすると、ビデオとプレイデータが紐づいて記録されていく、というものです。
- なるほど、集中力が鍛えられそうです。収集したプレイデータはどんなふうに活用されていますか?
監督・スタッフ・選手それぞれが目的に合わせて活用してくれています!
試合中で言うと、ホッケーの試合は1から4クオーターまであって、その各クオーターの合間に、データレポートが見られていますね。今の試合の数値的な情報から状況を把握したり、ビデオを活用して選手にフィードバックを行ったりしています。
試合中は主に監督からデータの要望を受けることが多いですが、試合後は選手からデータを求められることが多かった印象がありますね。試合中同様にビデオからのインサイトに加え、プレイの数値情報だけをダッシュボードのような形でレポート出力もできるので、それぞれが目的に合わせて、データを活用してくれているなと感じています。
- 1試合のデータが、さまざまな切り口で活用されているんですね。スポーツデータ収集の難しさってどんなところでしょう?
スポーツデータ収集の難しさは、「データの取得を人間がやっている」ところにあるかなと思います。一般的な分析に利用されるデータは、それ自体が事実に基づいた客観的なものであることが大半だと思いますが、スポーツデータは違う。
お伝えした通り、プレイデータを数値に落とし込むスカウティングはアナリストがプレイを「判断」してボタンを押すことで収集します。つまり極端に言えば、2人の人が同じ試合をスカウティングしたとして、その数値結果が全く同じになるとは限らない。その原因が主観であり、「人間が判断してデータを取得する」ということの難しさだと感じています。
例えば、自分のチームのデータをいいものにしたいという無意識の意識が働いてしまうことでミスのデータが複数残ることにネガティブになり、判断がブレる、みたいなことが起こりうるということです。…人としては理解できる感情ですよね。でも、これでは正しいインサイトを得ることができません。
僕は事前にこういった情報を先輩から聞いていたので、スカウティングはとにかく「第三者目線、無の境地で行う」ことを意識してやっています。
- アナリストとしてのプロ意識を感じます、流石です。では、やりがいに感じたことも教えてください!
スポーツデータが監督やスタッフにしか活用されないチームは、実は少なくありません。これは他のアナリストの話を聞く中でも、自分自身の選手時代の経験、個人アナリスト時代の経験からも感じていました。
さくらジャパンでのデータ利活用の状況にも不安があったというのが、正直なところでした。一生懸命取得したデータが活用されない、ゴミレポートになってしまうのが、アナリストにとっては一番残念。そうでなければいいな、と。
その不安はいい形で裏切られました。実際にやってみたら、「ビデオはできる限りすぐほしいです」という依頼が選手からあったり、数値的なレポートデータがほしい、結果どうだったんですか等、直接聞きに来る選手もいました。予想を遥かに超える反応に驚きましたが、選手のプレイにデータが直接活かされることは、僕にとって大きなやりがいでしたね。
あとは仕事後に「いっしーいつもありがとう」って褒めてもらえるのも、これまでになかったやりがいというか。はじめに話した通り、アナリストは自分一人なので、そこで得られた成果も間違いなく自分の成果なんですよね。だからこそ、「ありがとう」という言葉は素直にうれしいし、もっと頑張ろうという気持ちにさせてくれます。
- 最後に今やっていることと、今後の意気込みをお願いします!
合宿から戻り、今はINSIGHT LAB社の業務としてTableauの授業を作る案件を任せてもらっています。当社の教育コンテンツである「Data Analytics DoJo」のカスタマイズをしたり、、鋭意頑張っているところです。
もちろんゲームアナリストとしても、オリンピック出場を目指すこの時期にやるべきことがたくさんあり、忙しくも、とても充実しています。
どちらも並行して、全力で頑張ってきたいと思いますので、引き続き応援よろしくお願いします!
9月2日、3日には品川区の大井ホッケー競技場で男女代表による国際交流マッチが開催されます。
日本女子代表さくらジャパンは、フランス代表を迎えて試合をします!ぜひ、ご声援よろしくお願いいたします。