【イベントレポート】「データ分析から得られる価値をアナリティクスプロダクトに落とし込んだ事例」データ・マネタイゼーション カンファレンス2022

2022.11.25 イベント・登壇

データビジネス最前線を知るイベント「 データ・マネタイゼーション カンファレンス 」。

2022年10月21日、JPタワーホール&カンファレンス(KITTE)にて開催され、インサイトラボはSilver Sponsorとして参加し、当社データアプリコンサルタントの川村洋平が登壇いたしました。

今回はそのイベントレポートして、プロダクトとしてのデータマネタイゼーションをテーマに、Nasdaq、UiPath、Phillipsなどの各企業がBIツールをOEMとして実装した事例紹介を含め、川村の講演内容をサマリーでお届けします。

 

データは新しい石油。しかし、そのままでは役に立たない

データ分析と活用支援で200社以上の実績があるINSIGHT LAB株式会社。様々な分析の観点やノウハウ、そしてOEMの実績も持っています。登壇した川村自身も、今はコンサルタントを担っていますが、バックグラウンドはファイナンシャルではなく、データ分析をするベンダー側におり、各種ツールの資格も持っており、講演の冒頭はこんな言葉からはじまった。

「データマネタイゼーションというと、金融サイドからプレゼンされる方も多いと思います。今回、私はデータに特化したプロダクトとしてマネタイゼーションをどうしていくのかについて話したい」

データマネタイゼーションと分析がどのような関係があるのかについてなど、ここからは川村自身の言葉で紹介していきます。

データは新しい石油である。この言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。石油に価値があることは当然のことながら、原油のままでは役に立ちません。実際に使える石油という形になってこそ、その価値を引き出せるのです。データも同様に、日常業務で役に立つ“アナリティクスプロダクト”にすることで、ユーザーが業務で活用できるようになります。

そこでまず、私が伝えたいのは「溜まっているデータを、どうやって収益につなげていくか」です。

新たな収益源として新規事業を作っていくケースは圧倒的に多いのですが、いろいろなプロジェクトや事例を調べていくと、既存事業に対して分析機能を追加することが一番うまくいくパターンであるということがわかります。例えば、顧客ロイヤリティーの向上なら、既に顧客がいるところでより定着を図るなど、既存事業に分析という観点を付け加えていくことが事業を成功させるパターンなのです。

 

成長フェーズの企業におけるノーススターメトリック

では、企業が常に確認していくメトリック(測定基準)はどうでしょうか。主に用いるKPIは、以下のような指標が挙げられます。

  1. 収益
  2. 顧客数のグロース
  3. 消費におけるグロース
  4. エンゲージメントのグロース
  5. 収益性のグロース
  6. ユーザー体験

例えば、銀行ならユーザーがどれだけ口座を登録してくれているのか、その数を追い、最終的にはユーザーがどれだけ使ってくれているのかというアクティブユーザーの数を徹底的に見て最適化を図ります。そして、こういった分析をサービスとして成功させるために非常に役に立つのが、埋め込み型の分析機能です。独立系ソフトウェアベンダーは、埋め込み型の分析機能を使ってアプリケーションの評価が43%向上し、平均で25%の追加収益を生んだというリサーチ結果が出ています。

ただ、分析機能を追加するとなると“開発”が必要なので、ビジネスのコアバリュー、核となる価値と分析がどのように関連するかや、どれだけ緊急性が高いかを確認することが、ビジネスの発展に繋がります。

例えば、既存事業が分析にあまり関係せず緊急性も高くなければ、データマネタイゼーションを分析機能で強化していくことは検討し直した方がいいと思います。逆に、緊急性が高く、顧客が分析機能を欲しいというケースでは、パートナーシップとしてインテグレーションやAPI連携などをしていきますし、ビジネスのコアバリューと分析機能の必要性が非常に高く、けれど緊急性が高くない場合は自社開発をした方が良いのです。緊急性も高くビジネスのコアバリューとも関連性が高いケースでは、そういった機能を開発している会社を買収したり、いちプラットフォーマにならなくても、分析機能を自社のプロジェクトに買い取って使うことができるOEMを選択します。

 

コモディティ化したBIツールと、その飽和した市場

現在、いろいろなBI企業やプロダクトがあります。しかし、最低限のチャートの表示ならほとんどのBIツールでできるため、市場は飽和しており、この中からどれがOEMに適しているのかを選ぶのは至難の業です。

私が中立的立場で見ていくと、圧倒的に多いのはLooker、Sisense、QuickSightなどで、絞り込みはOEMの実績である程度はできますが、1つの考え方としてホワイトボードに書くイメージで以下に説明します。

BIツールを使う目的を細かくブレイクダウンしていくと、業務の効率化、成果を出すまでの時間短縮、新規製品の市場開拓、顧客の定着率を上げるなどいろいろなKPIがあります。それをデータを使って戦略を立てて成果に結びつけようという側面と、こういう結果を出すためにどのようにデータを扱うのかという側面、その双方で戦略が立てられるのではないかと思います。

実は企業がBIを導入しても、実は35%のユーザーしか能動的に使ってないという検証結果が出ており、さらに毎日活用するユーザーは20%以下という結果に。ほとんどが、週報を作るときにダッシュボードを開くとか、あとは上司に言われたときにBIツールを使うといった受け身の姿勢が多いというのはよく聞く話です。

とはいえ、能動的にデータを使っているユーザー層は、確実に収益の増加やコスト削減などに結び付けています。

そして、このような成果を得るためには、データから気づきを得ることが、日常業務に実装されていることが必須であり、データマネタイゼーションするという観点で日常業務でそのデータが使われるのであれば、その業務になじんだ形でプロダクトとして提供することで、使いこなせていなかったユーザー層が日々使うようなプロダクトに代わっていくというのがこの「データアプリケーション」の考え方です。

 

日常におけるデータアプリケーションの例

データアプリケーションというと、仰々しいイメージもあるかもしれません。しかし、日常的に意外と接しているものなのです。例えば、「食べログ」のタイ料理屋さんのスクリーンショットを見てください。

データアプリケーションの良い例で、まず定量のデータとして、レビューの評価点を確認したり、口コミの数や価格帯といった数値を無意識に見ています。分析というとハードルが上がりますが、データの確認はいろいろなアプリケーションで行っているのです。

さらには、定量的・数値的なデータだけではなく定性的なデータとして、どういったお店なのか、どういう料理が出るのかといった写真やメニューを見て判断をすると思います。そこから最終的にアクションとして、「保存」「電話」または「ネット予約」をするといった行動に繋がっていくことが大切なことです。BIツールというと、こういう側面はそんなに強くはないので、データアプリケーションとしてユーザーに使ってもらえるようにしていくことが大事なのです。

さらに突き詰めていくと、基礎研究と応用研究の違いを整理した研究者の論文が、私は非常に良い例だと思っています。これは、基礎研究をする方の発見する知識の種類は「科学的な発見」であったり、モチベーションは「好奇心」であり、そのフィールドにいる方々がなぜそこにいるのかというところに関心があるからだと思います。

鍵となっている基礎研究の質問は「仮説は正しいか?」。それを確認していくことで何かしらのルールや法則を理解、確認、発見していくことが重要になっています。

では、応用研究は何が違うのかというと、発見した知識をどう私たちの生活に活かしていくのか、つまり「発見した知識の応用」。モチベーションは持っている基礎的な知識をもとに「問題を解決すること」であり、それは実際に「機能するか?」どうかが非常に大切になってくるので、ポイントとしてはソリューションへ導くことが目的になっています。

同様に、BIは非常に基礎研究と似ていて、データが示す因果関係を理解する、科学的発見が何を意味するのかを理解することであり、モチベーションも業務の分析をするという好奇心に依存するケースが多いと思います。勘とか経験とかに揶揄されるケースも多いのですが、それをもとに仮説を立て、それが正しいかどうかをデータを持って確認する。そうすることで、データの意味を理解するというのがBIの本質的な価値だと思います。

では、データアプリケーションはというと、データで発見した知識をどう業務やビジネスに生かしていくかが大事で、非常に応用研究に似通っています。データを使う、持つ、理解するだけではなく、次のアクションをとる価値に結びつけることがデータアプリケーションの考え方であり、ここに着目していくBIツールが非常に重要になります。

事例から学ぶアナリティクスプロダクト

データアプリケーションの一番の重要なポイントとして、「Designing Data-Intensive Applicaticns」という本の中から持ってきた言葉を引用します。

複雑な使い方をするのではなく、ユーザーが何か間違った操作をしてしまうようなUIではなく、このデータをもとにやるべきこと、ベストプラクティスが詰め込まれている形で提供する。要は、正しいことを行いやすく、間違ったことを行いにくくするのが、データアプリケーションの非常に重要なポイントになります。

これまで、私もいろいろなプロダクトやBIツールを見てきましたが、SisenseのBIツールがOEMにおいて実績があるのと、埋め込み型としてデータアプリケーションにしやすいプロダクトであると感じています。

例えば、UiPathやNasdaq、急成長しているSaaSの会社がOEMの機能としてSisenseを導入しています。(もちろん、ここに乗せられないような事例もたくさんあります)

アナリティクスプロダクトを作り上げるのに特化しているSisenseの事例、ケーススタイルをご紹介します。

 

有名なところでいうとNasdaqのIRインサイトというサービスで、ダッシュボードのような形で機関投資家が使うプロダクトです。NasdaqがSisenseを選んだポイントとして実際に言っていたことは、「Sisenseは、標準機能として行うレベルのデータアクセスの管理ができるため、セキュリティに非常に厳しい組織でも、ユーザー単位や業務単位、オブジェクト単位など、様々なデータのセキュリティ管理ができること」という点です。

あとは、ユーザーがIRインサイトを使うときに、日常業務で使いやすいUIにしてワークフローを提供している。つまりワークフローの中でNasdaqのIRインサイトが使えるようになっているところもポイントです。

また、基本的にはドラッグ&ドロップで自分で使いやすいように変更することができるなど、カスタマイズ性に富んだUIなど非常にプロダクト化されており、テクニカルな実装の事例になります。

一方、テクニカルな実装はしていなくても、ユーザーの日常業務に使えるというLuzernというプロダクトもあります。

このプロダクトの特徴は、導入している企業の規模が大きいところが多いことです。いろいろなブランドや業界の、Webで何かを販売する企業がLuzernを使っていて、例えばリスティングのコンバージョンがほぼ倍になったり、多大な効果をユーザーに提供しているのは何かというと、いろいろなチャネルを通して販売するそのデータを自社サービスのChannelOptimizerというデータプラットフォームに集めて、そのユーザーインターフェースとしてSisenseを使っているのです。

事例を1つ挙げると、INSIGHT LAB株式会社は新宿に本社があるので、周辺エリアの食べログのデータとして「西新宿」をクリックすると200メートル圏内のお店が選べます。Sisenseだと、データをチャートとして見ていくだけではなく、UIを作りこんで、例えばトップページを見るとか電話をかけるなども、UIを簡単にカスタマイズして作ることができるのです。

Webアプリケーションのように仕立て上げるのを助けてくれるBIツールで、これをLuzernを使って価値を作ってユーザーに使っていただき、コンバージョンを上げることができるのです。

 

INSIGHT LABがSisenseの導入を支援

最後に、Sisenseをプロダクトのデータ分析機能として実装しているスマートキャンプ株式会社(マネーフォワード社のグループ企業)を紹介します。

BALES CLOUDという、ブラウザを立ち上げるだけで、メールをしたりIP電話でコールをしたり営業の業務が画面内だけですべて完結するようなサービスを提供している同社。ユーザーはリクルート社のような営業組織の強い企業で、特にインサイドセールスの方が使っており、導入することで非常に大きい効果を出しています。

それがどう役に立っているのか、なぜSisenseをこのプロダクトに組み込むことに選んだのかということをエンジニアの方が記事に書いているので、ぜひこのブログも読んでほしいです。

tech.smartcamp.co.jp/entry/strengths-of-looker-and-sisense

Sisenseはまだ日本で認知は大きくありませんが、データをプロダクトに仕立てていく、落とし込んでいくというところでは価値を引き出しやすいBIツールです。ご関心があればINSIGHT LABとして支援していくので、ぜひお声がけください。

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